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一級建築士事務所
株式会社KR建築研究所
〒221-0856
神奈川県横浜市神奈川区三ツ沢
上町2-16
TEL.045-412-4901
FAX.045-311-9271
既存建物における、地震を中心とした防災設計
既存建物の再生技術の研究開発、およびコンサルタント
建築設計におけるコンピューター利用技術の研究開発
一般建築物の設計監理
前各号に付帯する一切の業務
 

耐震設計

 
 
【耐震設計】過去の大地震被害に学ぶ。
東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
マグニチュード9.0阪神淡路大震災の180倍という途方もない規模は、津波や原発など想定外の大被害をもたらしました。
京浜地区の特徴的な被害は液状化、天井の落下、エレベーターといえましょう。液状化は予想外でしたが、天井、エレベーターは以前から警告を発していたことでした。
私共はこの甚大な被害に学び、研鑽を怠ることなく、建物の耐震化に努めて参ります。
 

耐震性ガイドライン

耐震性ガイドライン
 
まず、既存建物が大地震時にこうむる被害予測が大切です。
建物は完成時期(正確には確認済みの時期)により、次の3世代に分類され、それぞれ耐震性能が異なります。
また建物の階数が多いほど被害が大きくなります。
次に被害のランクを4段階とし、これらを表にまとめました。
第1世代 1971(昭和46)年以前の、旧基準による建物
第2世代 1972年から1980年までの、移行基準による建物
第3世代 1981(昭和56)年以降の新耐震設計による建物
震度分布予測図(神奈川県/南関東地震)
 
各世代ランク表

震度6の地震に対する被害予想。

 

【1ランク】軽微な被害

無被害。よく見れば壁に部分的なひび割れが入る程度の被害。

 

【2ランク】小破

壁および柱に亀裂が入る程度の被害。小規模な補強が必要なこともある。

 

【3ランク】中破

壁および柱にせん断破壊が生じ、建物の傾斜も考えられる。大規模な補強が必要。

 

【4ランク】大破

柱などが破壊し、建物全体または一部が傾斜する被害で修復は不可能に近い。

 

耐震改修設計の流れ

耐震改修設計の流れ
 
1


予備調査
まず、行政庁発行の震度分布予測図で敷地の震度を予め知っておくことが重要である。次に設計図、特に構造図をもとに建物下見により概略の診断を行う。図面がない場合は詳細な現地調査で柱や壁の鉄筋探査等を行い図面を作成する必要があるが、かなりの費用を要する。
 
2

現地調査
コンクリートコアを採取し、強度と中性化を調査する。またひび割れや劣化度等も調べる。鉄骨造の場合は溶接精度や劣化度等を調査する。非構造部材の調査も不可欠である。
 
3

耐震診断
日本建築防災協会等の基準により、計算プログラムを用いて耐震診断を行う。
 
 
4

判定
耐震改修促進法の構造耐震指標Is(≧0.6)及び(≧1.0)をクリアーするかを確認する。
指標を上まわれば終了、下まわる場合は補強を必要とすることになる。
 
5

補強診断
判定指標を下まわった場合は、概略の補強案を作成する。この段階では構造的に有利な箇所に補強ブレースやコンクリート壁等を計画することになる。多くの場合、ここまでが耐震診断費用に含まれる。
 
6

所有者、使用者との協議
建物の機能維持や工期、工事費などを入念に協議する。
 
 
7

補強設計
上記の協議に基づき補強設計を行う。構造計算により構造図を作成し、次に意匠図や設備図、仕様書など工事発注用図面としてまとめる。概略工事費用も呈示する。
 
8

工事発注
通常は二、三社の建設会社から見積徴集して決定する。元施工会社に依頼する場合もある。
 
 
9

計画認定申請
書類を所管行政庁に提出する。補助金を期待する場合には特に必要となる、工事終了後耐震改修済のプレートが発行される。
 
10
耐震改修工事
夏休みのある学校以外はほとんどが「居ながら工事」となる。騒音対策などの施工計画を入念に行う。設計図通りに工事が行われているか監理が重要である。
 
 

1.構造計算偽装マンションの発覚と横浜市の対応

1.構造計算偽装マンションの発覚と横浜市の対応
 
 平成17年11月17日、国土交通省が鉄)ヒューザーの販売するマンションに
構造計算偽装のあつた旨を発表し、以後大きな社会問題となった。
 
横浜市が公表した市内の構造計算書偽装マンションは次の通り
マンション名
(所在地)
 構造耐力検証値
Qu/Qun
行政処分等  その後の措置
Aマンション
(鶴見区)
 0.41  H17年12月2日
使用禁止命令
 平成19年11月耐震改修完了
Bマンション
(鶴見区)
 0.62  H17年12月16日
是正勧告
 平成23年3月耐震改修完了
Cマンション
(鶴見区)
 0.63  H17年12月16日
是正勧告
 平成26年1月耐震改修完了
 
 
※構造耐力検証値 Qu/Qun
震度7程度の大地震に襲われた際、安全な建物として必要な水平耐力Qunと、実際に建物が保有している水平耐力Quとの比。1.0以上を確保しなければならないことが建築基準法で定めてられている。

平成17年の暮に横浜市より弊社へ偽装マンション対策として協力要請があり建築局の責任者と共に一堂に会し、偽装物件に対して横浜市の方針を策定する事前打ち合わせを行ない、国交省の方針とは異なり建替えでなく耐震補強で進めることとなつた。
 

2.耐震偽装マンションの構造上の特徴

2.耐震偽装マンションの構造上の特徴
 
(1)X・Y方向に耐震壁がとれるように、ずんぐりした平面形としている。
通常の横長なマンションでは、Y方向(短辺方向)のみが耐震壁となっているが、X方向(長辺方向)にも耐震壁が存在する。このことが、X方向のじん性低下(硬すぎる)につながり、地震力の吸収を妨げている。
 

3.構造計算偽装のあらまし

3.構造計算偽装のあらまし
 
(1)建物重量の不当な見積もり。
(2)耐震壁に対する過度の耐力評価。(開口部の不当評価等)
(3)耐震壁に対する過度の耐力負担。
(41計算プログラムにおける入カデータの改ざん。
 

4.耐震補強設計の方針

4.耐震補強設計の方針
 
耐震補強設計は現行の建築基準法に適合しなければならない。その為には構造耐力検証値:Qu/Qun≧ 1.oが必至であり、次のような方針とした。

(1)既存の柱や梁を鋼板やカーボンファイバー等で巻立て補強することは建築基準法では認められない。更に、居住者の「居ながら改修」を前提に、居住空間での工事を極力減らすため、既存建物の外側に新たな鉄筋コンクリート架構を取付ける「アウトフレームエ法」を採用した。

(2)アウトフレームの柱は1本当り1000~ 1500KNの水平耐力が必要とされ1000× 1000程度の大きな断面を要し、梁も700× 900程度となる。また、基礎には大きな応力、特に引抜力が非常に大きくなるため、これに抵抗できる杭が必要となる。既存の杭と近接する際の配慮も必要である。
 
(3)既存のフレームとは後施エアンカーによリー体化を図る。後施エアンカーは建築基準法で建物での使用が認められていないので、国土交通省による認定が必要となる。

(4)X方向(長辺方向)では地震時のじん性を高めることにより地震エネルギーを吸収する構造特性係数Dsを0.25~ 0。3とすることが極めて有効である。
種々検討の結果、じん性の妨げとなっている耐震壁に縦に切れ日(スリット)を設け、スリット部のせん断補強のため鋼板を貼る工法とした。

(5)以上の工法を第二者機関(横浜市工法検討委員会)に諮問し、そこでの認定を経て建築確認申請を行つた。
 

5.所感

5.所感
 
(1)この種の業務は設計事務所として以下に挙げる能力が不可欠である。
①構造計画力
②住宅としてのキメ細かさに対応できる実施設計力
③各種法適合能力
④管理組合及び、住民、役所、建設会社などとの折衝力
⑤住民に対する配慮を欠かさない高い工事監理力
故に構造事務所のみでも、意匠事務所のみでも対応は困難である。

(2)既存建物の施工が良質であることが先決である。
担当した3つのマンションとも、コンクリートは良く、配筋状態の写真も保存されていた。
   
■Aマンシヨン
構造:鉄筋コンクリート造10階建て、19戸 延3,141.97ピ 平成17年6月完成
経緯
平成17年11月17日 国土交通省が構造計算書偽装があつた旨発表
平成17年12月 2日 横浜市が住民に建築基準法に基づく使用禁止命令を発表
平成18年7月30日 マンション管理組合が耐震改修を決議
平成18年10月 8日 弊社に「設計の発注」を決議
平成19年1月29日 横浜市公共建築物耐震工法検討委員会が設計内容を了承
平成19年2月25日 株式会社紅梅組に「工事の発注」を決議
平成19年3月26日 工事着工
平成19年11月25日
耐震改修事業竣工
(偽装マンション初の耐震改修)
 

■Bマンシヨン
構造:鉄筋コンクリート10階建て、47戸 延4,904.41ピ 平成13年1月完成
経緯
平成17年12月15日 横浜市及び国土交通省による耐震性能の不足の発表
平成17年12月16日 建築物の耐震補強等に関する是正勧告
平成19年2月5日
管理組合による耐震診断開始
(弊社以外での診断)
平成19年4月15日 管理組合による耐震診断結果の住民説明会
(横浜市公表値との相違、一部施工不良の指摘)
平成19年4月21日 管理組合耐震問題対策委員会に弊社所長出席
(弊社が第二者として検証報告の依頼を受ける)
平成19年5月14日 弊社にて施工記録を検証し施工に不備なしと報告
平成19年12月9日 管理組合が臨時総会において「耐震改修の方針」を決議
平成20年6月11日 耐震改修設計(実施設計)を委託
平成21年11月29日 管理組合が「耐震改修工事の発注」を決議
平成22年1月 9日 東鉄工業いと工事契約
平成23年3月30日 建築基準法に基づく検査済証交付(事業完了)
 

■Cマンシヨン
構造 鉄筋コンクリート11階建て、37戸 延3,670.14ぽ 平成12年7月完成
経緯
平成17年12月15日 横浜市及び国土交通省による耐震性能の不足の発表
平成17年12月16日 建築物の耐震補強等に関する是正勧告
管理組合、横浜市に対し訴訟開始
平成23年3月6日 耐震補強設計を委託
平成23年6月28日 訴訟取り下げ。耐震改修設計を委託
平成25年1月11日 工事契約 閉松尾工務店
平成26年1月31日 引渡し
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